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おひとりさまの老後資金|一人で生きるために必要な金額を計算してみた

「この先、もし自分一人になったら、お金はいくら必要なんだろう…」

こんにちは。終活カウンセラーの鈴木由美子です。3年前に、長年連れ添った夫を突然亡くし、55歳で「おひとりさま」になりました。子どもがいない私たち夫婦にとって、夫は一番の理解者であり、頼れるパートナー。その夫がいなくなり、お金のことも、これからの生活のことも、すべて一人で考え、決めていかなければならない現実に、当時は目の前が真っ暗になりました。

きっと、この記事を読んでくださっているあなたも、同じような不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。パートナーと死別された方、生涯独身の方、お子さんがいらっしゃらないご夫婦…。おひとりさまと一言で言っても、その背景は様々です。でも、共通しているのは「いざという時に頼れる人がいないかもしれない」「お金のことは自分で何とかしなければ」という、漠然とした、でも、とても重い不安だと思います。

夫を亡くしてから、私は必死でお金のことを勉強しました。そして終活カウンセラーとして、同じような境遇の方々のお話をたくさん伺ってきました。その経験から、今、不安を感じているあなたにお伝えしたいことがあります。それは、「大丈夫。一人じゃありません。きちんと現実を知って、今から準備をすれば、穏やかな老後を迎えることはできますよ」ということです。

この記事では、私が実際に計算し、専門家として学んだ知識を基に、「おひとりさまの老後資金」について、具体的で分かりやすい情報をお届けします。難しい専門用語は使いません。私自身の失敗談も交えながら、あなたと一緒にお金の計算をして、具体的な対策を考えていきたいと思います。

この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が「何をすればいいのか」という具体的な行動目標に変わっているはずです。さあ、一緒に未来のための第一歩を踏み出しましょう。

なぜ「おひとりさま」の老後資金は不安なのか?

夫婦二人で暮らしていると、意識することは少ないかもしれません。でも、一人になった途端、お金の不安が現実味を帯びてくるのはなぜでしょうか。それは、おひとりさま特有の事情があるからです。

頼れる人がいないという現実

私が一番に痛感したのは、「お金の相談ができる一番身近な人がいない」という心細さでした。夫が生きていた頃は、大きな買い物をするときも、保険を見直すときも、いつも二人で話し合って決めていました。でも今は、すべてを一人で判断し、決断しなければなりません。

病気やケガで働けなくなった時、収入が途絶えてしまったら? 介護が必要になった時、その費用は誰がどうやって支払うの? 夫婦世帯であれば、どちらかの収入や年金で支え合うこともできますが、おひとりさまは、自分の身に何かあった時の経済的なリスクをすべて一人で背負うことになるのです。

夫婦世帯との違い

統計的にも、おひとりさま、特に高齢の単身女性は経済的に厳しい状況に置かれやすいというデータがあります。65歳以上の高齢単身女性の貧困率は46.1%と、2人に一人が貧困という調査結果もあるほどです。 これは、男性に比べて平均寿命が長いこと、そして現役時代の働き方によって年金の受給額が少なくなりがちなことなどが背景にあります。

夫婦世帯であれば、二人分の年金収入が見込めますが、おひとりさまは自分一人の年金が頼りです。支出面でも、家賃や光熱費などの固定費は、一人だからといって半分になるわけではありません。むしろ、一人当たりの負担は重くなる傾向があるのです。

私が直面したお金の不安(実体験)

夫が亡くなった直後、私は悲しみに暮れる暇もないほど、たくさんの手続きに追われました。死亡届の提出、葬儀の手配、そして、預金口座の名義変更や保険金の請求…。夫に任せきりだった私は、通帳がどこにあるのか、どんな保険に入っていたのかさえ、すぐには分かりませんでした。

「夫の給料がなくなったら、来月からどうやって生活していけばいいの?」
「家のローンはまだ残っているのに…」
「私自身の年金だけで、この先何十年も暮らしていけるのだろうか?」

次から次へと湧き上がる不安に、押しつぶされそうになったことを今でも鮮明に覚えています。この経験が、私に「お金と真剣に向き合わなければ」と決意させ、終活カウンセラーの道へ進むきっかけとなりました。

リアルな数字で見る|おひとりさまの老後にかかる生活費

不安を解消する第一歩は、現実を正しく知ることです。まずは、おひとりさまの老後生活に、一体いくらかかるのか、具体的なデータを見ていきましょう。

総務省のデータから見る平均的な支出額

総務省の「家計調査報告(2024年)」によると、65歳以上の単身無職世帯の1ヶ月の支出は以下のようになっています。

項目金額
消費支出(生活費)149,286円
非消費支出(税金・社会保険料)12,647円
支出合計161,933円

出典:総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」より作成

これに対して、収入の平均は134,116円。そのうち年金などの社会保障給付が121,629円を占めています。

つまり、平均的な暮らしをしていても、毎月約2万8,000円(161,933円 – 134,116円)の赤字が出ているのが現実なのです。 年間にすると約33万円、もし65歳から90歳までの25年間この生活が続くと仮定すると、約825万円が不足することになります。

これはあくまで平均値です。次にご自身の生活に当てはめて考えられるよう、内訳を詳しく見ていきましょう。

【項目別】生活費の内訳をチェックしてみよう

先ほどの消費支出149,286円の内訳は、以下のようになっています。ご自身の現在の支出と比べてみてください。

費目平均金額あなたの支出額(目安)
食料38,000円
住居12,746円
光熱・水道14,000円
家具・家事用品6,000円
被服及び履物4,500円
保健医療8,000円
交通・通信14,000円
教養娯楽14,000円
その他の消費支出(交際費など)28,000円
合計約140,000円

出典:総務省「家計調査(2022年)」などのデータを基に作成

いかがでしょうか。「私はもっとかかっているわ」「ここはもう少し抑えられそう」など、色々な発見があったかもしれません。特に注目していただきたいのが「住居費」です。

持ち家か賃貸かで大きく変わる住居費

上記のデータでの住居費が約1万3,000円と非常に低いのは、調査対象の多くが持ち家(ローン完済済み)だからです。 もしあなたが賃貸住宅にお住まいなら、この金額に家賃が丸ごと上乗せされます。

例えば、家賃が月6万円なら、それだけで支出は20万円を超えてしまいます。老後も家賃を払い続けるということは、それだけ多くの資金準備が必要になるということです。 一方、持ち家でも固定資産税や修繕費はかかり続けますので、その分の備えは必要不可欠です。

生活費以外に準備すべき「3つの特別費用」

毎月の生活費の赤字分に加えて、私たちは突発的に発生する大きな出費にも備えなければなりません。特に、おひとりさまが意識しておくべき「3つの特別費用」があります。

1. 医療費・介護費への備え

年齢を重ねると、どうしても医療や介護のお世話になる可能性が高まります。生命保険文化センターの調査によると、介護にかかる費用は、住宅改修や介護用ベッドの購入などの一時的な費用が平均で47万円、月々の費用が平均で9万円となっています。

平均介護期間は約4年7ヶ月(55ヶ月)とされており、単純計算すると約540万円(9万円 × 55ヶ月 + 47万円)もの大金が必要になる可能性があるのです。 公的介護保険で1割~3割負担に軽減されるとはいえ、全額を年金でまかなうのは非常に困難です。

2. 自宅のリフォーム費用

持ち家にお住まいの場合、長く快適に暮らすためには、いずれリフォームが必要になります。特に、将来の身体の変化を見越したバリアフリー化(手すりの設置、段差の解消など)は、おひとりさまにとって重要な備えです。

また、給湯器の交換や外壁の塗り替えなど、10年~15年周期で発生するメンテナンス費用も、一度に数十万~百万円単位の出費となることがあります。

3. 自分のための終活費用

これは、残される誰かのためではなく、自分自身が安心して最期を迎えるための費用です。おひとりさまの場合、ご自身の葬儀やお墓、遺品整理などを誰かに頼む必要があります。

終活費用の種類費用の目安
葬儀費用20万円(直葬)~150万円(一般葬)
お墓の費用50万円(永代供養墓)~200万円(一般墓)
遺品整理費用3万円(1R)~50万円以上(一軒家)
死後事務委任契約など数十万円~数百万円

出典:各種調査データを基に作成

これらの手続きを専門家にお願いする「死後事務委任契約」などを結ぶ場合は、さらに費用がかかります。 自分の希望を叶え、誰にも迷惑をかけずに旅立つためには、こうした費用もきちんと準備しておくことが大切です。

私も夫を亡くした後、自分のお墓について真剣に考えましたが、いざ選ぶとなると本当に迷うものです。特に私たちおひとりさまは、後々の管理のことや、万が一の災害(地震など)のことも考えると、ただ形があれば良いというわけにはいきません。

だからこそ、お墓を建てる際は、長年の歴史と確かな技術を持つ専門家に相談することがとても大切です。例えば、石川県には創業97年の歴史と信頼を誇る山本石材店さんのような老舗があります。こちらでは、一級の国家資格を持つ職人さんが、耐震性までしっかり考慮した施工をしてくださるそうです。こうした地域で長く愛され、確かな技術を持つ石材店は、私たちの細かな不安にも親身に寄り添ってくれるはずです。

遠方にお住まいの方も、ご自身の地域でこのように長く続いている信頼できる石材店を探してみることが、後悔しないお墓選びの第一歩だと思います。

【実践編】私と一緒に老後資金を計算してみましょう

さて、ここからは、あなたご自身の老後資金を計算するワークです。電卓と、ご自身の年金情報がわかるもの(ねんきん定期便など)をご用意ください。一緒に、一歩ずつ進めていきましょう。

ステップ1:老後の収入(年金)を把握する

まずは、あなたの老後の収入の柱となる「公的年金」がいくらもらえるのかを確認します。「ねんきん定期便」や、日本年金機構のサイト「ねんきんネット」で、将来の年金見込額を調べてみましょう。

厚生労働省の調査によると、女性の厚生年金の平均受給額は月額約10万7,000円(国民年金含む)です。 これは男性の平均額より約6万円も低いのが現状です。 ご自身の働き方によって金額は大きく変わりますので、必ずご自身の見込額を確認してください。

ステップ2:老後の支出を予測する

次に、65歳以降の1ヶ月の支出を予測します。先ほどの「生活費の内訳」の表を参考に、ご自身のライフスタイルに合わせて金額を書き出してみましょう。

  • 持ち家(ローン完済)の場合:平均的な生活費(約15万円)+固定資産税・修繕積立金(月割)
  • 賃貸の場合:平均的な生活費(約15万円)+家賃

これに、旅行や趣味など、あなたが望む「ゆとりある生活」のための費用を上乗せすると、より現実的な目標額が見えてきます。

ステップ3:不足額を計算する

最後に、不足額を計算します。65歳から、女性の平均寿命である約90歳までの「25年間」で計算してみましょう。

【計算式】
(1. 毎月の支出額 – 2. 毎月の年金収入) × 12ヶ月 × 25年 = 生活費の不足額

この金額に、先ほど考えた「3つの特別費用(医療・介護、リフォーム、終活)」の合計額を加えたものが、あなたが老後に向けて準備すべき資金額の目安となります。

【シミュレーション例:A子さん(65歳・賃貸暮らし)の場合】

  • 毎月の支出: 21万円(生活費15万円+家賃6万円)
  • 毎月の年金収入: 11万円
  • 毎月の不足額: 10万円(21万円 – 11万円)
  • 生活費の不足総額: 3,000万円(10万円 × 12ヶ月 × 25年)
  • 特別費用の合計: 800万円(介護500万+終活300万)
  • 準備すべき資金額の合計: 3,800万円

いかがでしたか?具体的な数字を見て、驚かれたかもしれません。でも、落ち込む必要はありません。目標額が明確になったということは、今から対策が立てられるということです。

不足額をどうやって準備する?今からできる5つの対策

大きな金額を見て不安になったかもしれませんが、大丈夫です。今からできることはたくさんあります。

1. 家計の見直しと固定費の削減

まずは、毎月の支出を減らすことから始めましょう。特に効果が大きいのが、スマートフォン料金や保険料などの「固定費」の見直しです。格安SIMへの乗り換えや、保障内容が重複している保険の解約など、一度見直すだけで継続的な節約につながります。

2. 長く働くという選択肢

健康で、働く意欲があるうちは、できるだけ長く働くことも有効な手段です。65歳以降も働き続ければ、収入が得られるだけでなく、年金の受給開始を遅らせる「繰下げ受給」を選択できます。年金の受給開始を1ヶ月遅らせるごとに受給額が0.7%増え、75歳まで繰り下げると最大で84%も増額されます。

3. iDeCoやNISAなど資産運用の活用

「投資なんて怖い」と思われるかもしれませんが、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)は、国が用意した税制優遇のある資産形成制度です。 iDeCoは掛金が全額所得控除になり、NISAは運用益が非課税になるなど、大きなメリットがあります。 少額からでも始められるので、まずは仕組みを勉強してみることをお勧めします。

4. 公的制度や支援サービスの活用

おひとりの暮らしを支える公的な制度は、意外とたくさんあります。年金収入が一定額以下の場合に給付金が上乗せされる「年金生活者支援給付金制度」や、医療費の自己負担額に上限が設けられている「高額療養費制度」など、知っているだけで助けになる制度があります。 困ったときには、お住まいの自治体の窓口に相談してみましょう。

5. リバースモーゲージという選択肢も

持ち家がある場合に検討できるのが「リバースモーゲージ」です。これは、自宅を担保にお金を借り、亡くなった時にその家を売却して返済する仕組みです。 住み慣れた家を手放すことなく、老後資金を確保できる可能性があります。ただし、金利変動のリスクや、長生きした場合に融資限度額に達してしまう可能性などのデメリットもあるため、利用は慎重に検討する必要があります。

まとめ

ここまで、おひとりさまの老後資金について、具体的な数字を見ながら一緒に考えてきました。

夫を亡くした当初、お金の不安で眠れない夜を過ごした私ですが、一つひとつ現実と向き合い、やるべきことを整理していくうちに、少しずつ心が軽くなっていきました。お金の準備は、単にお金を用意することだけではありません。それは、これからの人生を自分らしく、安心して生きていくための「お守り」を手に入れることなのだと、私は思っています。

今日、この記事を読んでくださったあなたが、まず始めてみてほしいこと。それは、「ねんきん定期便」を開いて、ご自身の年金見込額を確認することです。それが、漠然とした不安を具体的な計画に変えるための、最も重要で、そして確実な第一歩です。

一人で抱え込まず、時には専門家を頼ることも大切です。お住まいの地域の相談窓口や、私のような終活カウンセラーも、あなたの味方です。

大丈夫、あなたは一人じゃありません。今日この一歩を踏み出した自分を、ぜひ褒めてあげてくださいね。あなたのこれからの人生が、お金の不安から解放され、心穏やかで豊かなものになることを、心から願っています。